Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
みちのく一人旅〜青森・春まだ先の下北交通〜
1994年3月の話。(続編)

小坂鉄道乗車を終えて、大館から青森へ移動。青森からは下北半島の大湊行・快速「しもきた」が出ている。
青森から東北本線を走り、野辺地で向きを変えて大湊線へ。ここではまだタブレットを使用している。
いよいよ下北半島へ入る。青森県のカギ型に出っぱった部分。
大湊線に入ると荒涼とした、本州離れした風景になった。同半島の特徴でもある。車内は買い物や用務を終えて帰宅する地元の人達。すでに字幕が必要な方言。

終点大湊の1つ手前、下北駅で下車。ここから「下北交通大畑線」に乗換え。
この路線は1985年、国鉄大畑線から地元バス会社の下北交通に移管された。バス会社が運行する鉄道路線。

(*交付金も底を尽き、赤字のため、下北交通大畑線は2001年4月1日廃止。その後、民間の保存団体により、大畑駅で車両が動態保存されている。)

わずか18kmの路線。むつ市中心部を経て、本州最北端・大間崎の手前、大畑までほぼ1直線に結ぶ。こんな場所に鉄道が・・理由は戦時中、海軍の大間崎要塞、津軽海峡防衛のために敷設された。大畑から先、大間に向けて建設が進められたが、戦局悪化で中止された。列車が走ることのなかった橋や土盛があるという。翌日大間崎へ行くのでこの目で見てみたい。

1両のディーゼル車が、森の中を走る。樺山駅付近は民家がなく、まるで北海道のよう。田名部(たなぶ)駅が唯一むつ市街というところか。と、いってもホーム1本の駅だが。
外は真冬。季節が逆戻りした。しんしんと雪が降っている。
下北には「恐山」がある。鉄道に乗っていても最果ての空気が漂うので、うまく命名したものだ。
まだ16:00頃だというのに薄暗くなった大畑に到着。
これまた奇特なマニアは私くらいだった。

駅近くの民宿に宿泊。客は出張のサラリーマン位しかいない。

「どこから来たの?」

民宿のおばちゃんが尋ねる。

「新潟です」

「もうあったかいでしょう」

“よそ者”には方言をセーブしてくれているようだ。家族との会話になると再び字幕スーパーに。イカ料理が美味しかった。

翌朝、バスで大間崎へ向かう。鉄道車両と同じ色。同じ会社が経営しているので当然か。
コンクリートのアーチ橋が見える。これが建設途中で終わった線路。下風呂温泉付近まで続いていた。カメラに収めていないのが残念。

本州最北端・大間崎に到着。
観光客はだれもいない。土産物店もシャッターを閉ざしている。
石碑の周りにいるのはカモメだけ。ものすごい強風。
まさに“津軽海峡冬景色”
ここから函館へフェリーが出ている。(その3年後の夏、函館からフェリーで大間に降り立つとは夢にも思わなかった)
荒波のかなたに、うっすらと北海道の島影が見える。

寒さに震えながら帰りのバスを待つことしばし、大畑線の接続が悪いので、そのままバスに乗ってむつ市へ戻る。むつバスターミナルからJRバスに乗り継いで、JR大湊駅へ向かった。

大湊から快速「しもきた」で半島から出る。しかし、強風のため陸奥横浜で運転見合わせ。車内は静か。青森の人もおとなしい。野辺地に戻る頃にはすっかり日が西に傾いていた。

ちなみにこの日の宿は、急行「津軽」で福島まで南下し、「八甲田」で青森へ戻る車中泊だった。
上野〜青森を結ぶ東北の名門急行だった両列車は、前年(1993年)ダイヤ改正で季節運転に格下げされた。両方運転されている日を選んで乗り込んだ。「津軽」では、深夜の福島駅で下車するため、気になってなかなか眠れなかった。無事「八甲田」に乗換えたら熟睡。未明の盛岡を夢うつつに見て、再び野辺地付近で目が覚めた。14系座席車のデッキ折戸の隙間から、雪が舞い込んでいたのが印象的だった。

結局、「津軽」と「八甲田」の乗車はこれが最後となった。
(*両列車は年々運転日が減少し、秋田新幹線の開業あたりから運転されなくなった。そうこうしているうちに同名の「つがる」として青森県内を走る列車名に代わってしまった。)

また、この頃の東北本線の普通列車はED75形、EF81形電気機関車が3〜4両の客車を牽いていた。本業は長い貨物や寝台特急の先頭に立つので、余裕のパワー。ヘタな電車より速かったのが印象的だった。真冬に雪煙を上げて走る様は頼もしかった。これらも何故か撮影していないのが悔やまれる。
その普通列車を乗り継いで、皆が集まる平泉へ向かったのだった。

新幹線の開通、ローカル線の廃止、東北本線の一部区間移管、新しい通勤電車の登場など、東北地方の交通を取り巻く環境はここ10数年で大きく変わった。

それでもお客さんは、昔と変わらぬ方言と、頭巾を巻いたお年寄り、色白の女性のままなのかもしれない。

(Fin)



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