Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
紙一重
時計屋のゑつ子さんが亡くなった。
金曜日の明け方だったという。享年62歳。
結局私は通夜も葬儀も出られなかった。聞くところによると、寂しい野辺送りだったらしい。
昨年の12月、ゑつ子さんは余命1年を宣告された。肝臓の癌が静脈を塞いでいた。医大の付属病院でも手が付けられない状態だった。それでも気丈に振る舞っていたが、ついに病には勝てなかった。

最後に声を聞いたのは10月の末頃。まだまだ元気だった。
最後に顔を見たのは12月5日。個室に移され、すでに意識はなく、顔は真っ黒になり、酸素を付けられていた。そこに付き添っていたのは仲の良い近所の方だった。
苦労を重ね、看とる家族は無く、寂しい人生だったと思う。しかし、そんなカケラも見せない明るい人だった。

ゑつ子さんの店では貴金属も扱っていた。昨年、運勢が良くなる文様が入ったメノウの携帯ストラップをプレゼントしてくれた。皮肉にもこれが形見となった。
当人も回復を願い、ブレスレットにしていたのに。

時計を扱う腕は確かだった。本人が病に伏してから、他の店で電池交換した。高齢の主人が、
「上等の電池が入ってるなぁ」

SEIKOの講習のため大阪へ出かけるといい、反対側のホームから手を振ってくれたこともあった。
店に行くと、必ずコーヒーを入れてくれた。絵を描くのも好きで、竹久夢路の人物画を色鉛筆で模写して、私に講評を求めたこともある。

貴女の最後を見送ることができなかったのを悔やみます。

あまりにもあっけない別れだった。
先週の私は浮かれていたが、命というものは時期が来ると入れ替わっていくのだろうか…。

落ち着いたら挨拶に行こうと思う。遅くなってごめんなさい。と。
「そんなん気にせんでええんやで〜」
という声が聞こえそうだ。

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