Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
8・6
元航空自衛隊航空幕僚長・田母神 俊雄 

この人が広島市内で講演を行ったという。周知のとおり、自衛官の立場でありながら過去の戦争を正当化させる論文を発表して問題となり、幕僚長を解任・退職した。
よりによって8月6日に広島で、しかも「ヒロシマの平和を疑う」という演題。各地から非難の声が上がり、広島市長が日程変更を申し入れたくらい。
講演内容の詳細分からないが、チケットは完売だったとか。

田母神氏は福島県郡山市出身で防衛大学校を経て航空自衛隊に入隊。この人は自衛官のタブーを破り、歯に衣を着せない発言の数々で近年有名になった。他の政治家や官僚にない求心力を感じられるのだろう。

発言の中には「自衛隊を動かしてでも、ぶん殴るぞという姿勢を北朝鮮に見せなければ拉致問題は解決しない」というものがあった。私でも頭に浮かぶような考えだ。職業柄、人一倍愛国心が強くなった結果かもしれない。

自衛官には思想や発言に法的制限があるので確かめる術はなさそうだが、厳しい訓練を積んで国家を守る任務を担う隊員には田母神氏に賛同する向きもありそうだ。事実、氏が航空幕僚長に任命されている位なので、自衛隊という組織の精神論が見え隠れするような気がする。


ここで歪んだ正義が蔓延った太平洋戦争について考えてみたい。

かの司馬遼太郎氏は青年時代に徴兵され、戦車部隊として戦地に赴いたという。著書にこんな話がある。

上官の指示があった。

「敵機が飛来したら駐屯地から全速で市街地へ走れ」

司馬は咄嗟に考えた。

「しかし、民衆が荷物を抱えて避難してきます」

上官は、

「轢っ殺して往け!」

このような体験を通じて司馬は戦争がもたらした「正義」の麻痺を考えたという。
大八車に荷物を積んで逃げてくる自国民を何故轢き殺さなければならないのか。国民を守る任務が武力行使の大義名分と化していることに戦争の愚かさを思ったという。「お国のため」「神風」という見えないイでオロギーだけがひとり立ちして後ずさりできなくなってしまった。

例えれば、パチンコに負けて取り戻すためにつぎこむようなものか。

田母神氏の発言も極論に達すると、司馬氏の上官のようになってしまうのかもしれない。
しかし今日、教科書検定を受けた「絵に描いた餅」だけで、平和に関する教育が為されているとは言い難い。

田母神氏の表現には過激なものもあるので100%同意できないが、内容の是非は別として氏の講演により平和について考える議論が為されるチャンスがあっても良いと思う。半世紀以上前の戦争を後世に伝えることは大切だが、謝り続ける国は他にない。いつまでも「自虐史観」では良いことはなく、自国を愛するなら考えてみようよ。という趣旨ではないか。ケンカの仲直りした後もずっと謝っていては本当の仲直りにならない。
結局、更迭問題は政治攻防の材料になっただけのような気がする。

数年前、平和公園の千羽鶴を燃やした関○学院大の学生がいたが、結局「古傷に触れるな」という言論統制を通じて、「平和」を復唱するだけで平和になれるよと言い聞かせた結果がこの通りなのかもしれない。

軍人が政治に関与することが禍となった戦争だが、国を護る立場の人間が平和について自身の意見を述べることは認められてもよいと思う。ましてや今の田母神氏は民間人。本件は言論の自由とか弾圧という話にも発展しており、朝日新聞みたいな言い方をしていると独裁国家になってしまう。
そんな事を考える自分は「右」寄りなのかもしれないが。


20数年来お会いしていないのだが、ハトコの姑さんは広島在住で実は「手帳」を持っておられる。若い頃から苦労をされたと察する。(ちなみにハトコの夫=息子さんはアメリカ在住。さすがにお母さんは渡米に抵抗があるらしい)
また、私の祖母の兄も戦死の憂き目に遭っている。

広島・長崎のみならず、戦争を体験した人は、戦争はもうこりごりだと思うとともに、司馬遼太郎の言う「正義の麻痺」を感じたのではないだろうか。


一方でアメリカは北朝鮮にクリントン元大統領を派遣して拘束された記者を釈放させることに成功した。さすがにクリントンは金正日をぶん殴っていないが、やっぱり北朝鮮はアメリカの顔色を伺っていると見える。いっこうに拉致問題が解決しない日本はナメられたものだ。

事なかれ主義の外交では何も解決しない。
そんな意味で田母神氏の声は弱腰の日本に檄を入れるようなものなのかもしれない。

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