Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
依頼人
日曜日の夕方、玄関のベルが鳴った。

「Hといいます」

出ると小中学校の同級生、H君だった。
約20年振りの再会。中学校卒業後の夏、橋の上で偶然出会ったのが最後だった。その時、H君は彼女らしき子を連れていたので挨拶を交わしただけだったと思う。

初めて彼に出会ったのは10歳の年。5人兄弟の末っ子らしく、クラスで一番の元気者だった。
滑舌も良くスポーツも得意で、いつも取り巻きを連れており、私とは対照的だった。彼の派閥に属して言うことを聞いていれば安泰という感じで、先生まで支持している。そんなH君が少しうらやましくもあった。

ある日、運動会の鼓笛隊での担当楽器を決めることになった。
私は抽選でドラムを引いた。希望が叶い、運の良さに喜んだ。
ところがH君がドラムをやりたいので交代してほしい「わかってるやろな!」と耳元でささやいた。
結局「協議して交代した」ことにして彼にドラムを譲り、皆と同じリコーダーに徹した。
これは彼やその取り巻きとの無用な争いを避けるためで、私に勝ち目はないと思ったから。
やむを得ず選んだリコーダー。これも捨てたもんじゃない。メロディを聴いて即興で演奏する技もこの頃手にした。

悪戯してはおとなしい子を泣かしていた彼だが、決して私に悪さをすることはなかった。もしかしたら都合のいいように使えると計算されていたのかもしれない。
そんな思い出が蘇った。

H君の一番上のお兄さんが選挙に出馬するので後援会に署名をお願いしたいという。知り合いがいないので同級生の家を探しては頼んでいるらしい。

今日、H君は4人の子供の父親になっているという。私よりも早く社会に出て荒波に揉まれて頑張っており、彼なりに苦労があるようだ。落ち着いた口調で、もう子供の頃のヤンチャの面影は見えない。

さて、用紙を見ると法華経の…いちばん気が進まない政党だが、別に金銭トラブル等でもないので署名することに。まあ私は民間なので問題ない。
ん?今でも都合のいいようにアテにされてるって…?。

H君は深々と頭を下げて帰った。


玄関口に立ち尽くして思った。
蘇った少年の思い出。
私は昔から人前では引っ込み思案な性格で、本当の自分を表現することは、どちらかと言えば不器用だと思う。物を造ること、文章を書くことなどが自分にとっていちばん有効な表現方法だと感じることがある。
そして口から出る理屈は少なくても確固たるポリシーを持ち続けていたいと思う。頑固にならない程度に。
僣越ながら自分のささやかな行動を、誰かに喜んでもらえること、支持してもらえることほど嬉しいことはない。
様々なご縁を巡り合わせてくれる方々に感謝するとともに、仲間は素晴らしいと思う。

人それぞれ生き方はあるが、今のポジションに揺らぎなければ、自分の信念を貫けばよい。

という訳で、これからも現状ラインを維持しながら、時々背伸びすることにしようと思った。

そんな黄昏の出来事。
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