Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
ジオラマの旅
※このお話は当然フィクションです。今回製作したジオラマの世界への小旅行です。
〜ジオラマの旅・少年が見た最後の蒸気機関車〜

万博の賑わいも忘れ去られようとしている197X年10月、高校2年生の私は山野井機関区へ訪問することにした。
この数ヶ月で蒸気機関車が急速に姿を消している。千姫線ではもう最後の1両になったという噂を聞いたからだ。
撮り鉄の私は気になって仕方ない。授業も上の空・・。
昼前に学校を抜け出した。

13:20 大阪からの急行「あかり2号」は、山野井駅に到着。
駅構内の踏切を通って機関区事務所へ撮影許可をもらいに行く。(この時代はのんびりしており簡単に許可がもらえたという)


C58型蒸気機関車が扇形庫から出てきた。蒸気機関車が引退したあとの扇形庫はディーゼル車両の車庫に転用されつつある。
ダイナミックにターンテーブルで向きを変えるのに見とれてしまい、慌ててカメラを向ける。


側線では真新しいディーゼル機関車、DE10型が待機。蒸気機関車を追いやった張本人。職員の方々は新しい車両の取扱方法を習得するのに余念がない。


C58は給水、給炭線へ向かい、石炭と水を補給。
蒸気機関車を動かすには、石炭を燃やしてお湯を沸かし、その蒸気圧で車輪を回転させる。しかも構造上、終点で向きを変えなければならない。蒸気機関車の運行には、大掛かりな施設が必要となり、人手も要する。時代遅れの産物とされ、近年、電気やディーゼルに交代が進んだ。1975年(昭和50年)年度中を目処に全廃されるらしい。

ところが、後ろで待機していたDD13型ディーゼル機関車も動き出した。
職員の方々も集まっている。何がはじまるのか。

DD13型ディーゼル機関車とC58はガッチリ連結された。それは蒸気機関車が山野井機関区から姿を消す時を意味していた。

長年、千姫線で苦楽を共にした職員の方々に最後の石炭と水をタップリ与られ、その労をねぎらうように・・。
ディーゼル機関車の甲高い汽笛が鳴り、誘導員の手旗でC58は後ろ向きに引きずられながらゆっくり動き出した。

急いで反対側の陸橋に登り、走り去っていく機関車を撮影した。

構内掛の方が話しかけてきた。

「あのカマ(機関車)は山野井で一番優秀で扱いやすいと乗務員に好かれていたんだ。今日、舞鶴へ移っていったんだよ。検査期限まであと半年あるから、来年春には解体されると思うよ。ところで君、学校は?」

「あの・・試験休みでして;」

今日かぎりで、この機関区設備の役目は終わった。山野井機関区から石炭の匂いは消える。あっけない幕切れだった。いつまでも秋空に残った煙を眺めていた。

今頃、学校から自宅に電話がかかってきているかもしれない。


(ジオラマの旅 Fin.)
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