貴生川からは近江鉄道。こちらは電化されており、貴生川から八日市・彦根を経て、米原を結ぶ本線と、八日市〜近江八幡、高宮〜多賀大社の支線を有する、全長約60kmのローカル線。切符にハサミを入れてもらうのは、今となっては懐かしい。
滋賀県の人達は近江鉄道を「ガチャコン」と呼ぶらしい。そのガチャコンと音をたてて走る様子のイメージからか。
西武グループなので、ライオンズ色の電車が停車していた。本家西武鉄道ではあまり見かけない色だが・・。12:55発車。
近江鉄道はただのローカル線に見えるが、実は1896年開業という歴史を持つ。新橋〜横浜に初めて汽車が走ったのが1872年(明治5年)なので、日本の鉄道では指で数える中に入るほどの古豪。近江商人と彦根藩士の苦労によって敷設されたという。
今も古い駅やレンガ積のトンネル等がそのまま残っている。
まばらな乗客、冷房のよく効いた昼下がりの車内は眠くなってくる。特に、貴生川〜八日市は閑散区間で、山野を縫ってのんびり走る。水稲はもう穂が出ている。
八日市に到着。折角なので近江八幡までの路線も往復することに。JRに連絡するためか、先程より車内は盛況。京都か草津へショッピングに行く雰囲気の人が多い。私は昨夜遅かったので、居眠りにちょうどよい。乗車した西武鉄道お古の電車は車体が長いので、急カーブでぶつからないように、黄色い電車がチーズのように、ボディ角を切り落としてあるのが面白かった。
再び八日市に戻ると、待ち時間が出来てしまった。駅前の平和堂でお茶を飲んで時間をつぶす。地方のショッピングセンターの休日は盛況。外は溶けるような猛暑。
再び東を目指す。車内に自転車を積んでいる人がいる。日中は自転車持込可能らしい。それでもガラ空きなのでいっこうに構わない。部活帰りの高校生はアイスを食べている。ブレーキが掛かると、ベビーカーがゆっくり前方へ転がってゆく。前にいた別のお客さんが止めて、笑顔がこぼれる。何とものどかな光景。
すると、豊郷駅からウォーキング姿の中高年団体が大挙して乗ってきた。50名はいる。歴史ウォークみたいなやつか。車内は養鶏場のように賑やかになる。同時に汗臭と加齢臭?が充満する。
我々は2つ先の高宮で下車。
ここから多賀大社まで1駅の支線が出ている。多賀大社は有名な神社だが、以前行ったことがあるので今回は往復するだけ。そういえば電車の運転席に貼ってある、交通安全のお守りも「多賀大社」だった。
乗り換えに20分ほどあるので構内を観察する。Y字型に線路が分岐した股の部分に三角形のホームがある。屋根は木造。駅員が配置されており、「打ち水」をしている。
「♪消し忘れたままの伝言板 打ち水する若い駅員 次の汽車で君は帰ってくるよ 新しい靴は少し痛い」
渡辺美里の曲(「すき」:1989年)でしか聴いたことがないが、本当にやっているのを見るのは初めてだった。
側線には使用されなくなった電車や貨車が留置してある。解体せずに捨ててあると言ったほうがよいのか、5年ほど前に来た時から移動していない。マニアには楽しい場所。
彦根方面からの電車が到着すると、3人の乗り換え客があり、すぐ発車。
5分ほど走って、名神高速が見えるとすぐ終点・多賀大社前。
昔はここから貨物で石灰石を出荷していたらしく、構内は広い。何故か新しいレールもあるので、初詣の臨時列車を止めたりするのだろうか。
「あんたら降りんのやね?」
と、運転士が言ってドアを閉める。すぐ折り返し。(続く)