Zakkan (雑感)

趣味の雑感。
続・地下鉄・天空駅
ガラス戸の先には、繁華街が広がっていた。しかも昭和40年代を感じさせる場末の歓楽街といった雰囲気。
居酒屋、キャバレー、スナック、古風な風俗店が地下街に続いている。喧騒の店内には、これまた30〜40年前の風体の男女が見える。平成の世に、こんな場所があったのか。
店頭でボーイさんらしき人が出しているお札は、聖徳太子の1万円札。
昔のビン用自動販売機は昔の値段。居酒屋のテレビでは大阪万博がナントカと言っている。まさか本当にタイムスリップしているのか!

不安と恐怖のあまり、早足で歩く。「天空駅」表示のある角を曲がった。

再びガラス戸を開けるとそこは駅だった。切符券売機の前にベンチが並んでいる。まさかここも?しかし券売機は現在のもので、運賃も現行。ピタパも使える。
行先は「阿倍野市」と「住吉」。大阪市内なのに阿倍野市?天王寺付近の地名だが妙な名前。とりあえず阿倍野市まで230円。
地下鉄のくせに20分毎にしか来ない・・。待合室があるのに納得。

それにしてもさっきの光景は何だったのか。首をひねる。

壁面に「地下鉄住吉線・天空駅のあゆみ」という掲示がある。
VTRでは先ほどの歓楽街が放映されている。
「天空の城・楽園」とある。どこかで聞いたことのあるような名前・・。
30年ほど前までは歓楽街があり、阿倍野市まで南海電車が乗り入れていたらしい。

「兄ちゃん、昔賑わったの知らんやろ」
先ほどの老人が声をかけてきた。
「今も営業している店がありましたけど・・」
「いいや。皆とっくの昔に潰れてシャッター閉めてんがな」
「たしかにさっきは・・」

ガラス戸の先を覗いても、薄暗い地下道が続くだけ。紫やピンクの灯りは見えない。辺りは静まりかえっている。余計に気持ちが悪くなった。

老人の話では、「天空」は新宿の歌舞伎町を凌ぐ、日本唯一地下の歓楽街だったという。
壁面に古いポスターが展示されている。
天空を含む地下鉄住吉線と国鉄の切符を組み合わせた、北陸・山代温泉宿パック旅行の案内。
特急「雷鳥」と、背中を流す女性の写真。何か怪しげな温泉宿だ。「浮世の旅」などとある・・。

案内放送が流れ、地下鉄電車が入ってきた。堺筋線と同じ形で、堺筋線の茶色ではく、空色のラインが入った電車だった。
(続く)
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